「甲羅が柔らかい気がする…」
「足に力が入っていない…」
「最近あまり動かなくなった…」
そんな変化が見られる場合、もしかするとクル病(代謝性骨疾患/MBD)が関係しているかもしれません。
クル病は、カメの骨や甲羅の形成・維持に関わる代謝異常のひとつです。
特に成長期のカメでは、UVB不足・カルシウムなどの栄養不足・温度管理の不備など、複数の要因が重なることで発症するリスクが高まります。
一度進行すると骨や甲羅に変形が残ることもあるため、症状が出てから対処するのではなく、普段から飼育環境を整えておくことが大切です。
この記事では、静岡県浜松市の亀専門店「レプタイルショップ∞K-slash」が、
- クル病とはどんな病気なのか
- カメがクル病になる主な原因
- 見逃したくない初期症状
- クル病になった場合の対応
- 今日からできる予防方法
について、初心者の方にも分かりやすく解説します。
愛亀の健康を守るためにも、ぜひ最後までチェックしてくださいね。
カメのクル病とは?初心者でも知っておきたい骨と甲羅の病気

カメにとって甲羅は、単なる「外側の硬い殻」ではありません。
甲羅は骨格の一部であり、体を支え、内臓を守る重要な役割を担っています。
クル病になると、この骨や甲羅の形成・維持に必要なカルシウムなどの代謝に問題が生じ、甲羅や骨が正常に発達できなくなったり、柔らかくなったり、変形したりすることがあります。
クル病=代謝性骨疾患(MBD)
クル病は、一般的に**代謝性骨疾患(MBD:Metabolic Bone Disease)**と呼ばれる状態のひとつとして扱われます。
MBDは特定のひとつの原因によって起こる病気ではありません。
たとえば、
- UVBが不足している
- カルシウムなどの栄養が不足している
- 栄養バランスが偏っている
- 温度が適切でない
など、複数の要因が関係することがあります。
そのため、
「カルシウムを与えれば大丈夫」
「UVBライトを付ければ大丈夫」
という単純なものではありません。
紫外線・栄養・温度など、飼育環境全体を整えることが重要です。
幼体・成長期は特に注意
成長期のカメは、骨や甲羅が急速に形成されるため、栄養や飼育環境の影響を受けやすい時期です。
特にベビーの時期は、わずかな飼育環境のズレが長期的な成長に影響することもあります。
「まだ小さいから大丈夫」ではなく、お迎えした時から適切な環境を整えることが大切です。
ミズガメ・リクガメどちらにもクル病のリスクがある

クル病はリクガメだけの病気ではありません。
ミズガメ・半水棲種でも、飼育環境によっては発症する可能性があります。
たとえば、
- ニホンイシガメ
- クサガメ
- アカミミガメ
- ダイヤモンドバックテラピン
なども、適切なバスキング環境やUVB、栄養管理が必要です。
一方、リクガメも種類によって生息環境が大きく異なるため、「リクガメだから強いUVBを当てればいい」と一律に考えるのではなく、種類や飼育環境に合わせた照射量を考える必要があります。
カメがクル病になる4つの原因と危険度

クル病の原因はひとつではありません。
当店で飼育相談を受ける際にも、UVB・栄養・温度など、複数の飼育環境に問題が見つかるケースがあります。
代表的な原因を確認していきましょう。
| 原因 | 注意度 | 主な問題 |
|---|---|---|
| UVB不足 | ★★★★★ | ビタミンD3の合成を十分に行えず、カルシウム代謝に影響 |
| カルシウムなどの栄養不足 | ★★★★☆ | 骨や甲羅の形成に必要な栄養が不足 |
| 栄養バランスの偏り | ★★★★☆ | 特定の餌への偏食などにより必要な栄養が不足 |
| 温度管理の不備 | ★★★☆☆ | 消化・代謝などが十分に働かない可能性 |
※「危険度」は一般的な飼育上の注意点を示した目安であり、実際の発症原因は個体や種類によって異なります。
紫外線不足(UVB不足)
室内飼育で特に注意したいのがUVB不足です。
UVBを浴びることで、カメの体内ではビタミンD3の生成が促されます。
ビタミンD3は、カルシウムの吸収・利用に関わる重要な要素です。
そのため、UVB環境が適切でない状態が続くと、カルシウム代謝に影響し、骨や甲羅の健康を損なう可能性があります。
ただし、
「UVBがない=必ずクル病になる」
というわけではありません。
栄養や温度など、ほかの飼育条件も合わせて考える必要があります。
窓際なら大丈夫?
「窓際に水槽を置いているから、日光は当たっています」
という相談もあります。
しかし、一般的な窓ガラスはUVBを大きく減らすため、窓越しの日光だけで必要なUVBを安定して確保するのは難しいと考えたほうがよいでしょう。
室内飼育では、飼育している種類に適したUVBライトを用意することをおすすめします。
▼詳しくはこちら
【関連記事】カメに紫外線ライトは必要?日光浴だけではダメな理由とUVBライトの選び方
2.カルシウムなどの栄養不足

骨や甲羅を形成するためには、カルシウムをはじめとするさまざまな栄養素が必要です。
そのため、餌の量だけでなく、どのような餌を主食として与えているかも重要になります。
たとえば、
- 特定の餌ばかり与える
- 栄養価の低い餌に偏る
- カルシウムなどの必要な栄養素が不足する
といった状態が長く続けば、健康な成長を妨げる可能性があります。
乾燥エビだけに偏るのはNG
乾燥エビはカメが好んで食べることも多く、嗜好性の高い餌です。
しかし、乾燥エビだけを主食として与え続けると栄養バランスが偏る可能性があります。
おやつとして活用する場合でも、主食とのバランスを考えることが大切です。
3.偏食による栄養バランスの崩れ
「これしか食べないから、仕方なく毎日与えている」
という状態も注意が必要です。
カメは、好物ばかりを選んで食べることがあります。
その結果、
好きなものだけ食べる
↓
栄養が偏る
↓
成長に必要な栄養素が不足する
ということにもつながります。
リクガメの場合は、植物の種類によってカルシウムとリンの比率やシュウ酸などの成分も異なるため、特定の野菜だけに偏らないよう注意しましょう。
▼餌についてはこちら
【要注意】カメがエサを食べない5つの原因|すぐ確認したい対処法とは?
4.温度管理が適切でない
意外と見落とされやすいのが「温度」です。
カメは外温動物なので、自分で体温を一定に保つことができません。
そのため、適切な温度環境を選んで体温を調整しています。
特にバスキングスポットでしっかり体を温められない状態では、消化や代謝などに影響する可能性があります。
つまり、
UVBだけ用意すればOKではありません。
紫外線・温度・栄養をセットで考えることが大切です。
この症状は要注意!カメのクル病チェックリスト

クル病が疑われる場合、次のような変化が見られることがあります。
ただし、これらの症状はクル病だけで起こるとは限りません。
異変がある場合は自己判断せず、爬虫類を診察できる動物病院へ相談してください。
甲羅が柔らかい
特に成長期のカメで、甲羅や腹甲が以前より柔らかく感じる場合は注意が必要です。
ただし、種類や年齢によって甲羅の硬さには違いがあります。
「以前と比べて明らかに柔らかくなった」という場合は、早めに専門家へ相談しましょう。
甲羅が変形してきた
甲羅が不自然に盛り上がる、左右のバランスが崩れるなど、成長に伴って形状に変化が見られることがあります。
変形にはクル病以外の原因が関係する場合もあるため、写真などを記録しておくと診察時にも役立ちます。
足に力が入りにくい
- 歩き方がおかしい
- 足を引きずる
- 立ち上がりにくい
- 水中で泳ぎにくそうにしている
といった変化が見られる場合は注意してください。
食欲が低下している
食欲不振も、体調不良のサインのひとつです。
ただし、食欲低下には温度、水質、ストレス、季節変化、病気など、さまざまな原因があります。
「食べない=クル病」と決めつけず、飼育環境全体を確認しましょう。
クル病になりやすいNG飼育環境

ここでは、当店でもご相談の多いポイントを紹介します。
紫外線ライトを使用していない
「部屋が明るいから大丈夫」
「窓際だから日光は当たっている」
という状態では、UVBを十分に確保できない可能性があります。
室内飼育の場合は、種類に合ったUVB環境を整えることが重要です。
UVBライトを長期間交換していない
ここも非常に重要です。
UVBライトは、点灯している=UVBが十分に出ている、とは限りません。
製品によってUVBの出力低下や交換目安は異なるため、メーカーが指定する交換時期を確認しましょう。
「まだ明るく光っているから大丈夫」と何年も使い続けるのは避けてください。
購入日や交換日を記録しておくと管理しやすくなります。
ミズガメのバスキングスペースがない
ミズガメの場合、水中だけで生活するのではなく、体を完全に水から出して乾かせる陸場を用意することが重要です。
その陸場に、適切な温度とUVBを確保できる環境を整えましょう。
今日からできる!カメのクル病を防ぐ3つのポイント

クル病は、発症してから対応するよりも、日頃から飼育環境を整えておくことが何より大切です。
1.種類に合ったUVB環境を整える
室内飼育では、カメの種類や飼育環境に合ったUVBライトを用意しましょう。
重要なのは、
- UVBの種類
- 照射距離
- 照射範囲
- ケージの高さ
- メッシュ越しの設置
- 交換時期
などです。
単純に「強いライトを買えばいい」というものではありません。
▼UVBライトの選び方はこちら
【関連記事】カメに紫外線ライトは必要?知らないと危険な理由を亀専門店が解説
2.栄養バランスのよい主食を選ぶ
カメの種類に適した総合栄養食を主食として取り入れることも、栄養管理の基本です。
当店でも取り扱っている**マズリ(Mazuri)**は、カメの種類に合わせた製品が用意されており、主食の選択肢のひとつとしておすすめしています。
ただし、餌の種類や与え方はカメの種類・年齢・成長段階によって異なります。
「この餌だけを与えていれば絶対に大丈夫」と考えるのではなく、種類に合った食事内容を整えることが大切です。
水棲ガメの場合
水棲ガメ向けの総合栄養食を中心に、成長段階に合わせて餌を選びます。
リクガメの場合
植物食性の種類であっても、種類によって適した植物や栄養バランスは異なります。
「食べるから」という理由だけで、特定の野菜だけを与え続けないようにしましょう。
リクガメ用(5M21)
リクガメに必要な豊富な植物性繊維と、骨や甲羅を形成する最高のカルシウムバランスで作られています。
水棲ガメ用(5M87)
成長期の幼体から成体まで、健康な甲羅を作るための栄養がバランスよく凝縮されています。水に溶けにくく飼育水を汚しにくいのもポイントです。
粒の形が崩れにくく水も汚れにくい。何より、多くのプロが愛用している安心感があります。
エサに迷われている方は、まずはこのマズリを主食に据えることをおすすめします。
3.温度を「感覚」ではなく数字で管理する
「手を入れてみて暖かいから大丈夫」
ではなく、温度計を使って実際の数値を確認しましょう。
特に重要なのが、カメが自分で体温を調節できるよう、温度の異なる場所を作ること。
バスキングスポットなど、種類に適した温度環境を用意し、カメ自身が移動して体温を調整できるようにします。
▼温度管理について詳しくはこちら
【関連記事】【2026年版】リクガメにおすすめの温湿度計7選|失敗しない選び方と設置場所も解説
クル病は治る?症状がある場合はどうすればいい?

「クル病かもしれない」と思ったときに、一番大切なのは自己判断で様子を見続けないことです。
軽度の場合には、飼育環境や栄養状態を改善することで状態が良くなる可能性があります。
一方で、重度になると骨や甲羅の変形、骨折などが起こり、後遺症が残るケースもあります。
また、甲羅が柔らかい、足に力が入らない、食欲がないといった症状は、クル病以外の病気でも見られます。
そのため、
「クル病だと思うからカルシウムを与えておけば大丈夫」
と自己判断するのはおすすめできません。
異変を感じたら爬虫類を診察できる動物病院へ
当店では飼育環境についてのご相談はお受けできますが、診断や治療を行うことはできません。
少しでも気になる症状がある場合は、爬虫類を診察できる動物病院へ早めに相談してください。
受診する際は、
- カメの種類
- 年齢
- 体重
- 普段の餌
- UVBライトの商品名
- ライトの使用期間
- 照射距離
- ケージ内の温度
- 最近の食欲や活動量
などを伝えられるようにしておくと、診察の参考になります。
カメのクル病についてよくある質問
Q.クル病は他のカメにうつりますか?
A.クル病(代謝性骨疾患)は感染症ではないため、基本的に他のカメにうつる病気ではありません。
ただし、同じ飼育環境で複数のカメを飼育していて、UVBや栄養、温度などの環境に問題がある場合は、同じ環境で飼育している個体にも健康上の問題が起こる可能性があります。
Q.屋外飼育ならクル病になりませんか?
A.屋外で適切な日光浴ができる環境であれば、自然光からUVBを得られるというメリットがあります。
しかし、屋外だからクル病にならないわけではありません。
栄養不足や温度管理、安全面などにも注意が必要です。
Q.紫外線ライトは毎日必要ですか?
A.室内飼育では、基本的に毎日、種類に適したUVB環境を確保することをおすすめします。
点灯時間は1日8〜12時間程度をひとつの目安とし、飼育している種類やライトのメーカー推奨に合わせて調整しましょう。
夜間は消灯し、昼夜のサイクルを作ってあげることも大切です。
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まとめ|カメの健康を守るために、まず飼育環境を見直そう
カメのクル病(代謝性骨疾患)は、UVB・栄養・温度などの飼育環境が大きく関係する病気です。
特に室内飼育では、次の3つを意識しましょう。
- 種類に合ったUVB環境を整える
- 栄養バランスのよい食事を与える
- 適切な温度環境を作る
そして、
「甲羅が柔らかい」
「歩き方がおかしい」
「足に力が入らない」
「食欲が落ちた」
など、普段と違う変化があれば、早めに動物病院へ相談してください。
カメは不調を分かりやすく訴えてくれる動物ではありません。
だからこそ、飼い主さんが普段から「食べる量」「動き」「甲羅の状態」「温度」「ライト」を確認しておくことが、愛亀の健康を守ることにつながります。
