
「甲羅が柔らかい気がする…」
「足に力が入っていない…」
「最近あまり動かない…」
その症状、もしかすると“クル病(代謝性骨疾患)”かもしれません。
クル病は、カメ飼育で非常に多い病気のひとつで、特に初心者飼育で起こりやすい病気です。
原因の多くは、
- 紫外線不足
- カルシウム不足
- 偏った食事
- 温度管理不足
など、飼育環境にあります。
しかし逆に言えば、正しい飼育環境を整えれば予防できる病気でもあります。
この記事では、静岡県浜松市の亀専門店として、実際によくある症例や初心者がやりがちなミスも交えながら、カメのクル病についてわかりやすく解説します。
カメのクル病とは?初心者でも知っておくべき骨と甲羅の病気

カメにとって甲羅は命を守るシェルターであり、体を支える骨格そのものです。
その大切な部分がボロボロになってしまうのがクル病です。
クル病=代謝性骨疾患(MBD)
専門用語では「MBD(Metabolic Bone Disease/代謝性骨疾患)」と呼ばれます。
これは単一の病名というより、体内のミネラルバランスが崩れ、骨の代謝に異常をきたす状態の総称です。
骨や甲羅が正常に形成されなくなる病気
本来は石のように硬いはずの骨や甲羅が、カルシウム不足によってスカスカになり、変形したり折れたりしやすくなります。
爬虫類で非常に多い
トカゲやカメなど、紫外線を必要とする爬虫類飼育において、最もポピュラーで最も警戒すべき病気です。
幼体で特に起こりやすい
体が急成長するベビーの時期は、大量のカルシウムを必要とするため、わずかな栄養不足が数週間で症状として現れます。
ミズガメ・リクガメどちらも発症する

種類を問わず、すべてのカメに発症のリスクがあります。
ミズガメでも多い
クサガメやミドリガメ(アカミミガメ)などは、「水の中にいるから日光はそこまで重要じゃない」と誤解されがちですが、実は非常に多くの発症例があります。
リクガメは特に紫外線管理が重要
陸上で生活するリクガメは、野生下では強烈な太陽光を浴びています。そのため、家庭での飼育では、より高出力な紫外線ライトによる管理が不可欠となります。
カメがクル病になる3つの原因!紫外線不足と栄養バランスの落とし穴

カメがクル病になる原因は、単なる「運」ではありません。
その多くは、日々の飼育環境の中に潜んでいます。
紫外線不足(UVB不足)
これがクル病の最大の原因です。
初心者の方が「ライトなしでも元気そうだから大丈夫」と判断してしまうことが、悲劇の始まりになるケースが多々あります。
紫外線の中でも「UVB」という波長が足りないと、体内で「ビタミンD3」が作られません。
ビタミンD3は、食べたエサからカルシウムを吸収するために不可欠な「鍵」のような役割をします。
ライトがないと、いくらカルシウムを摂取しても体に取り込まれず、そのまま排泄されてしまうのです。
カルシウム不足
エサそのものに含まれるカルシウムが足りない場合も当然リスクになります。
NG例
乾燥エビ(淡水エビ)ばかり与えている:カメが大好きな乾燥エビは、嗜好性は高いですがカルシウムとリンのバランスが非常に悪く、こればかり与えているとクル病を誘発します。
野菜の偏り:リクガメの場合、リンが多い野菜や、カルシウムの吸収を阻害する「シュウ酸」を多く含む野菜(ホウレンソウなど)に偏ると危険です。
偏食・栄養バランスの崩れ

「食べるから」という理由だけで特定の好物だけを与え続けるのは、初心者の方が陥りやすい罠です。
好きなものだけ与える:おやつ感覚のエサに慣れてしまうと、栄養バランスの整った人工飼料を食べなくなる「偏食」が始まります。
乾燥エビ中心の食事:栄養が偏り、成長に必要なミネラルが枯渇します。
参考記事:【要注意】カメがエサを食べない5つの原因|すぐ確認したい対処法とは?
温度管理不足
意外と見落としがちなのが「温度」です。
カメは変温動物(外温動物)なので、体温が上がらないと内臓が正常に働きません。
適切な温度(バスキングスポット)がないと、消化吸収の効率が著しく落ち、せっかくの栄養が身につきません。
この症状は危険!カメのクル病を見分けるチェックポイント

クル病は早期発見が命運を分けます。
毎日のコミュニケーションで、以下のポイントをチェックしてください。
甲羅が柔らかくなる
健康なカメの甲羅は、大人が指で押してもびくともしません。
しかしクル病になると、腹甲(お腹側)や背甲の縁がゴムのようにペコペコと凹むようになります。これは非常に危険なサインです。
甲羅が変形する
成長に伴って甲羅がボコボコと盛り上がったり、本来の形とは違う方向に反り返ったりします。
一度変形した骨格は、成長しても二度と元には戻りません。
足腰が弱くなる
うまく歩けない:陸上で這うように歩く、足を引きずる、などの動作が見られます。
力が入らない:水棲ガメの場合、泳ぎに力がなくなったり、陸地に上がるのが困難になったりします。
食欲が落ちる
体がだるく、痛みを感じるようになると、あんなに欲しがっていたエサに見向きもしなくなります。
これも代謝異常の二次的な症状です。
クル病になりやすいNG環境!ライトの「寿命」に気づいていますか?

当店に相談に来られる方の飼育セットを確認すると、共通した「クル病になりやすいポイント」が見えてきます。
紫外線ライトを使っていない
「部屋が明るいから」「窓際に置いているから」は通用しません。
ガラスはUVBを遮断します。室内飼育には専用のライトがマストアイテムです。
ライトを長期間交換していない
ここが超重要です! 紫外線ライトは、球が切れていなくても寿命がきます。
光っていても、半年〜1年経つと「紫外線(UVB)」はほとんど出ていません。
ただの「明るい電球」になっていることに気づかず、クル病を発症させてしまうケースが後を絶ちません。
甲羅干しスペースがない(ミズガメ)
水の中にずっといると、皮膚病のリスクだけでなく、効率よく紫外線を浴びることができません。
完全に体が乾かせる陸地と、そこを照らすライトのセットが必須です。
今日からできるカメのクル病予防!専門店が教える3つの鉄則

クル病は「治療」よりも「予防」が100倍簡単です。
以下の3点を整えるだけで、発症リスクは激減します。
紫外線ライトを適切に設置する
UVBライトと、体を温めるバスキングライトを併用しましょう。
関連記事:カメに紫外線ライトは必要?知らないと危険な理由を亀専門店が解説
バランスの良いフードを与える
おやつではなく、主食として「これさえ食べていれば安心」という総合栄養食を選びましょう。
参考記事:亀専門店が厳選!おすすめのエサ4選と失敗しない選び方
当店でも人気なのが「マズリ(Mazuri)」シリーズ
動物園や水族館でも採用されている信頼のブランドです。
リクガメ用(5M21)
繊維質が豊富で、カルシウムとリンのバランスが完璧に計算されています。
水棲ガメ用(5M87)
成長期の仔亀から成体まで、健康な甲羅を作るための栄養が凝縮されています。
粒の形が崩れにくく水も汚れにくい。何より、多くのプロが愛用している安心感があります。初心者の方は、まずはこのマズリを主食に据えることをおすすめします。
温度管理を見直す
温湿度計を必ず設置し、カメが自分で体温調節できる「温度勾配(温かい場所と涼しい場所)」を作りましょう。
クル病は治る?専門店が伝える現実と病院への相談

「クル病かも?」と思ったら、一刻も早い対応が必要です。
初期なら改善する可能性はある:軽度のカルシウム不足であれば、環境改善とサプリメント投与で進行を止め、骨を硬くすることは可能です。
重症化すると後遺症が残る:変形した甲羅や、麻痺してしまった足は完治しません。
異変を感じたら早めに病院へ
当店のような専門店はアドバイスはできますが、「治療」はできません。爬虫類を診られる動物病院を事前に探しておきましょう。
よくある質問
Q: クル病はうつりますか?
A: 感染症ではないので、他のカメにうつることはありません。ただし、同じ劣悪な環境で多頭飼育していれば、全員が同時に発症する可能性は高いです。
Q: 屋外飼育ならクル病にならない?
A: 室内よりリスクは低いですが、日当たりが悪かったり、エサが著しく偏っていたりすれば発症します。
Q: 紫外線ライトは毎日必要?
A: はい、毎日10〜12時間程度点灯させるのが基本です。
まとめ:カメの健康は飼い主さんの「知識」で決まる
クル病は、飼育環境さえ整っていれば100%防げる病気です。
- 紫外線(UVB)ライトは必須!半年〜1年で必ず交換。
- 主食はマズリなどの信頼できる総合栄養食にする。
- バスキングスポットを作り、代謝を上げる温度を保つ。
静岡県浜松市の当店でも、「甲羅が柔らかい気がする」「食欲がない」「ライト環境が合っているかわからない」といったご相談を非常によくいただきます。
カメは体調不良を隠す生き物なので、飼い主さんが異変に気づいた時には症状がかなり進行しているケースも少なくありません。
特に初心者の方は、「紫外線環境」「温度管理」「エサの栄養バランス」の3点を最初に完璧に整えてあげてください。
それが、愛亀と20年、30年と長く健康に暮らすための、唯一にして最大の近道です。